Thursday, July 31, 2008

「万台こゆるぎの森」の民活は「得」か?

「万台こゆるぎの森」“民活”について

 すでに報じられているように大磯丘陵に広がる「万台こゆるぎの森」が50年の定期借地権つきで星槎大学という学校に貸し出されようとしています。
ここは「マリア修道会」として昭和34年に開発された山頂部一帯のエリアで、その後、野村證券の研修所として使われていました。この合計8万8211平方メートルの土地が平成9年ごろから使用されなくなり、平成15年に野村證券から大磯町に寄贈され、周囲の斜面を2億円で町が取得したものです。
 この通称「野村跡地」が平成17年から森林公園「万台こゆるぎの森」として公開され、現在に至っています。
この土地の取得に際して「不必要な土地を買った」「町の無駄遣い」との声もありましたが、グラウンドがリトルリーグ(硬式)の野球場として有志の手によって整備され、また深い森の散策路もそれまでの公園にない雰囲気のある歩道として町民に支持されてきました。
平成18年度の年間利用は約1万人と決して多くはありませんが、人々を癒す山上の森が町民に無形の豊かさを与えてきました。
ところで、町財政の健全化と民活の導入を公約として当選した現町長は規定の路線として「万台こゆるぎの森」の売却を図りましたが、寄贈された公有地という制限があるために果たせず、「定期借地権」という新手の手段を講じて“民活”に至ったという経緯があります。

今でも、驚くほど多くの町民が「万台こゆるぎの森」は不必要で無駄な土地という認識があります。その無関心に後押しされて公有地の切り売りに等しい今回の計画が進んでいるわけですが、本当にこの“民活”が町民に寄与するかどうか検証してみたいと思います。

民活は本当に『得』か?

善悪で論じるのではなく、ここで『誰が得をして、誰が損をするか』で考えみましょう。

まず、現時点からみて。
「万台こゆるぎの森」の年間維持費は約900万円と発表されています。仮にこのまま50年間経過すると4億5千万円の出費となります。
そして定期借地権の賃料ですが、年間1000万円(新聞発表)で計算すると、50年の収入総額が5億円です。
この支出と収入を合計すると50年間で9億5千万円。これが町の『得』と考えられます。
さて、『万台こゆるぎの森』の年間利用者数は1万人とされています。これが50年間で50万人です。この人数が「万台こゆるぎの森」と同等の自然公園に大磯から向かうと仮定しましょう。大磯周辺の自然公園で似たところを探しますと秦野の戸川公園、小田原のこどもの国、また大雄山付近があります。いずれも片道10km以上ありますから車を使った場合、往復20kmと仮定しましょう。
1台に2名乗ったとして25万台が20kmは走ったとして15リットルのガソリンを消費します。このガソリン代と有料道路代で2500円と仮定すると単純計算で6億2千500万円かかります。つまり、これが町民の損となります。

さて、町と町民の利害が一緒だと仮定して、町の『得』9億5千万円から町民の『損』6億2千500万円を差し引くと、「万台こゆるぎの森」を50年間貸し出したトータルの『得』は3億2千500万円に縮小します。

道路計画で『大損』に

 さて、『誰が得するか』ですが、さらに別の当事者が浮かんできます。それは現在市街化調整区域として開発が規制されている「万台こゆるぎの森」周辺の地権者たちです。
山の上に大学が誕生するとなると、現状の道路では確かに狭すぎます。この通称「マリア道」を幅9メートルの道路として整備するための測量が昨年度の予算で完了しています。
 つまり、まだ星槎が大学を設置するという計画がないころから、いつのまにか大学用の道路が計画されているのです。この道路で『得』をするのは大学と周辺の地権者(行政の幹部の方もおられますね)、そして建設業者です。『損』をするのは4億円とされている工事予算を負担する『町』です。
 先ほどの定期借地権での賃貸料などで50年間で3億2千500万円の『得』だった町ですが、道路負担の4億円を差し引くと大変、ついに7千500万円の『損』になってしまいます。

星槎学園のわかりにくさ

もうひとつの当事者が借り受ける星槎大学です。この学校は本部が横浜にある通信制を基本にした学校法人です。おもに不登校の学生を対象にしたスクーリングや通信教育で高校卒業の資格を取らせています。また、このなかの「大学」と呼ばれているものは北海道芦別市の廃校跡に置かれています。
つまり現在は、通常の通学制4年制大学の実体はありません。
けっして星槎学園を非難するものではありませんが、星槎大学の計画書には疑問が多いものでした。そのひとつに、現在少年野球場になっているグラウンドを人口芝化してサッカー場にすると書かれていました。
サッカーをしたことがある人間なら「人口芝のサッカー場」など考えられないものです。Jリーグの基本理念のひとつに『芝のピッチの普及』が掲げられているほどです。(芝の生育が難しい寒冷地などでは実験的に敷設されていますが)。さらにサッカーの顧問として奥寺康彦氏を招聘するとされています。しかし横浜FCのゼネラルマネージャーである奥寺氏が、湘南ベルマーレのホームタウン地域で活動することは、Jリーグ規約で制限されていることです。7月23日に町役場で開かれた星槎学園の説明会でも、この人工芝サッカー場計画は少年野球関係者などから強い反発が出ていました。
つまり、のこのようなことを企画書に盛り込む星槎という学校法人が、町民にとってはよくわからない存在なのです。
学校側は約14~15億円をかけて事業を行うと発表しています。逆に50年間の限定でこのような投資が見合うものなのでしょうか。
外から見て、星槎学園の『得』が見えてこないことにも不安を覚えます。

「いままでどおり」はとても無理

もちろん、星槎大学や町当局は「今までどおり公園として利用できます」とアナウンスするでしょう。しかし、年間1000万円とはいえ賃貸料が発生すれば第一義に使用権があるのは貸借側となります。さらにエリア内の事故や事件に対する管理責任も発生します。
つまり町民は「お願いし」して「許可」されたときのみ利用できると考えるのが普通です。大学の計画では幼稚園も含めて多数の学生や職員数の大学ができると発表しています。約9万平方メートルあるとはいえ、「今までどおり利用」というのはとても考えられません。現実に少年野球チームは自ら整備したホームグラウンドを失うのです。

この“民活”は矛盾だらけ

 かなり乱暴な計算ではありますが、現に公園として供用されている土地を定期借地権付きで貸し出すとしても、町長のいう町財政の健全化とはかけ離れた結果になってしまいます。

50年の管理支出4億5千万円+賃貸料5億円=9億5千万円-町民交通費支出6億2千500万円-道路建設費4億円=△7千500万円

さて、大磯町が本当に町長がいうところの財政を健全化しなくてはならないほど困難な状況なのでしょうか?。
2008年7月22日の神奈川新聞に「県内自治体の財政状況を示す指標」という記事がありました。これによると財政力指数(財政支出と自前収入の指数=1.00以上で健全)は大礒町で1.01とあります。ちなみにお隣の二宮町は0.85、平塚市は1.12。財政破たんした夕張市は0.23です。
これをみても大磯町は、『住民サービスを低下させてまで、公有地を貸し出さなくてはならない』ほど困ってはいないと言えるでしょう。
つまり「万台こゆるぎの森」の民活の前提となる数字は、示されていないのです。
皆さんはこれらのことを、どうお考えでしょうか?。

最後に、『万台こゆるぎの森基本計画』によって整備したとすると、段階的の約5億2千万円の費用がかかるとされています。しかし整備によって町民の利便性が増すという『得』も考慮に入れて、整備費用をトータルの計算に含めないこととしました。
また真に“民活”というならば「万台こゆるぎの森」のイメージに沿ったレストランや商業施設、ミュージアムなどを誘致して経費を節約するなどの方法が考えられます。
今回の民活のように隠密裏に運ぶのではなく、プランニングの公開コンペなどでこの森をPRすることもできるはずです。
せっかく授かった「万台こゆるぎの森」に、町民が夢を描けるようなやり方はまだたくさんあると思います。

7月23日の町の説明では、「星槎学園に決めたが、まだ契約はしていない」とのことでした。
『万台こゆるぎの森』は、まだ私たちの手元にあるのです。

Wednesday, July 30, 2008

「万台こゆるぎの森」のご案内

このブログによく登場する「万台こゆるぎの森」について、ご案内します。

大磯町にある湘南屈指の穴場をご紹介しましょう。
ワンマン宰相で知られた吉田茂の別邸は海に面した景勝地に建てられています。その吉田邸からゆるやかな谷を北にさかのぼると、標高100mほどの大磯丘陵になっていきます。
『万台こゆるぎの森』は、その里山の上に広がる8万8千平方メートルの自然公園です。

ここはちょっと不思議なところです。
今から50年ほど昔、薪炭をとる山だったこの地にキリスト教の修道院ができました。山の上にノアの箱舟をかたどった2棟の建物を建設し、森の中に寄宿舎や家畜舎を設けて、祈りの場所となったのです。それから15年ほどして修道院は山を去ります。
引き継いだ証券会社は研修施設として使っていましたが、それも使われなくなって、ここ10年ほどはまったく無人になっていました。やがて修道院時代に植えられたヒマラヤ杉は大木に成長し、広い敷地にあった散策路は昼なお暗い森に変わっていきました。

大磯町民が「マリア山」とか「野村研修所跡地」と呼んでいたこの施設が大磯町に寄付されたのが平成15年のこと(一部は購入)。
町は修道院の雰囲気を残す森を整備し、研修所時代に設けられたグラウンドを公園として開放しました。これが「万台こゆるぎの森」です。
 現在、ノアの箱舟形の建物は閉鎖されていますが、散策路は歩きやすく整備され、いかにも祈りの場だった場所らしい、おごそかな雰囲気につつまれています。
グラウンドには一面にクローバーが茂り、斜面の竹林を分け入ると、かつて『ルルド』と呼ばれた泉の洞窟もあります。
 残念ながら大磯町はこの公園をあまりPRしていません。おかげで訪れる人も少なく、わずかに休日、グラウンドでボールを追う少年野球の子供たちや、木陰で楽器の練習をしたり、写生をしている姿を見かけるぐらいです。

公園内には遊具や、自販機などはひとつもありません。あるのは、見事な巨木と陰影深い森。そして、時だけが作り出せる凛とした空気だけです。
案内標識もなく、谷戸に伸びる農道のような道を歩き、さらに苔むした坂道を登ったところにある不便で不親切な「万台こゆるぎの森」。
 でも夏になると、大賑わいになる大磯ロングビーチのわずか数キロのところに、こんな深い森があるとは驚きです。
夏の蝉時雨、秋の虫の合唱。
四季折々の姿を見せてくれる「万台こゆるぎの森」。
そして、ここからみる富士山は大磯随一という声もあります。

そんな、なにもないことが、とても豊かに感じられる「万台こゆるぎの森」を、いちど歩いてみませんか。

●「万台こゆるぎの森」には、JR大磯駅から神奈川中央交通バス「磯1・磯14系統」番場経由二宮駅北口行「城の下」バス停下車、徒歩10分です。
また「磯13系統」湘南大磯住宅行・国府津行・大磯プリンスホテル行で「城山公園前(じょうやまこうえんまえ)」バス停下車徒歩15分です。大磯駅から歩くと30分~40分ほどかかります。

●開園日時 1月5日~12月27日 ・ 開園時間 9時~16時 ・ 休園月曜日(祝日の場合は翌日)

●園内にトイレと休憩所はありますが、ゴミ箱や飲料水はありません。火気の使用もできません。(飲料水の自販機は徒歩10分ほどの大磯運動公園内にあります)。
また一部に立ち入り制限区域があります。自然公園なので時期によっては蜂や蛇なども現れます、草むらには充分注意しましょう。

●駐車場は園内と大磯運動公園にあります。

●大磯町の問合せ先 都市整備課 公園みどり班(運動公園管理棟内)
☎ 0463-61-8822








Wednesday, July 23, 2008

「万台こゆるぎの森」を守る写真展

万台こゆるぎの森の写真展「50YEARS!」を大磯町役場前の カフェ・ぶらっとで開催しています。 この森が、町がもくろむ“民活”で変貌する前の、いまのままを切り取った写真を展示しています。

ちなみに、カフェ・ぶらっとのスパイシー・シナモンティ550yenは僕のおすすめです。

カフェ・ぶらっと☎0463・62・0020 
月・木曜13時~18時、火・金曜12~18時。(水・土・日・祝休み)
写真展は8月18日~31日まで